SAP S/4HANAとは!? 導入のメリット・2027年問題を解説
SAP S/4HANAは、SAP HANAデータベースをプラットフォームとしたSAP ERP次世代ソリューションソフトウェアです。ERPシステムを導入している企業では、2027年問題に向けてSAP S/4HANAをご検討されているでしょう。
本記事ではSAP S/4HANAについて詳しく解説します。
SAP S/4HANAとは
SAPはドイツに本社を置くソフトウェア企業であり、一般的にSAP社の提供しているERP製品がSAPと呼ばれています。
しかし、正確にはSAPとは企業名称であり、ERP製品名称ではありません。
SAP社の提供するERP製品は、1972年の創業以来全世界で多くの企業が導入し、1992年に日本法人が設立されました。
リリース以降、SAP社のERPシステムは40年以上に渡り進化を続け、最新のERPソリューションがSAP S/4HANAです。
現在日本においては、2,000社以上が導入しているとされているSAP ERPですが、2027年に保守サポートが終了します。
サポート終了に伴って、次世代ERP製品であるSAP S/4HANAへの移行を促しています。
SAP S/4HANAとSAP HANAは全くの別物
SAP HANAは、インメモリー技術を活用したデータベースソリューションです。
従来のオンディスクデータベース(ストレージに記録する方式)に比べ、インメモリーデータベースでは、原則全てのデータを内蔵メモリ上に展開します。
読み込みや書き込みをRAM上で行うため、数百倍から数万倍の速度で処理が可能です。
一方、SAP S/4HANAとは、SAP HANAのアーキテクチャを利用したERPソリューションです。
SAP S/4HANAは、SAP HANAデータベースをプラットフォームにした次世代ERPシステムを指します。
SAP S/4HANAの特徴
SAP HANAの技術を全面的に採用し、アーキテクチャを再構築したSAP S/4HANAですが、その特徴についてご紹介します。
①中間テーブルを排除し高速処理が可能
SAP S/4HANAでは、SAP HANAをベースとしてSAP ERPソリューションを全面的に再構築しているため、データモデルが大幅にシンプル化しています。
インメモリーデータベースによる高速処理に加え、処理テーブルの簡素化によって中間テーブルによる処理を排除し、数万点規模の在庫情報処理も瞬発的な計算処理が可能です。
②UIやUXを大幅に改良
従来のSAP ERPでは機能ごとに集約されたUIだったため、ユーザーは処理ごとに画面を遷移していました。
SAP S/4HANAではUI/UXが大幅に見直され、ロール別に画面の設計が可能になりました。
これにより、画面の遷移数が大幅に削減され業務の作業効率が格段に向上しました。
③コアに機能を統合
SAP S/4HANAでは、Principle of Oneという原則の概念から、SCMやCRMのようなシステム間での重複処理を削減しコア範囲の再定義をしています。
基幹系(OLTP)と分析系(OLAP)の統合が提供され、複数業務のオペレーションを一貫したプラットフォームによって業務を行うことが可能です。
SAP S/4HANA導入のメリット
SAP S/4HANAを導入することによって、得られるメリットについてご紹介します。
①スピーディな意思決定が可能
SAP S/4HANAを導入するメリットは、ERP本来の目的である企業全体を俯瞰した資源の可視化です。
各部署に分散している、業務データを一元管理することで、企業内で起こっていることをリアルタイムで管理し、タイムリーな判断ができます。
分析とレポーティングを同一プラットフォームで行うことにより、スピーディーな経営意思決定が可能です。
②高速処理により業務効率が向上
インメモリーデータベースによって高速化したSAP S/4HANAの計算能力で膨大な経営情報データを分析し、業務効率化が向上する点が大きなメリットです。
さまざまな業務の処理機能が、ひとつのシステムへ集約されているため、各業務でのデータ入力が不要です。
複数業務の処理を連結させ、処理のプロセスを自動化できます。
インメモリーデータベースによるゼロタイムレスポンスという、高速処理による恩恵は業務効率の改善に役立ちます。
③オンプレミス型とクラウド型両方のメリットを享受
SAP S/4HANAの特徴でもある、オンプレミス型とクラウド型の両方に対応していることが大きなメリットです。
従来のオンプレミス型のシステムから、クラウドファーストへとシステム環境は変化しています。
しかし、オンプレミス型はセキュリティ管理や拡張性が、クラウド型に対し優れているというメリットがあります。
SAP S/4HANAでは、オンプレミス型とクラウド型を組み合わせて、ハイブリッドサーバーを構築することも可能です。
④セキュリティの強化
SAP S/4HANA導入のメリットとして、ガバナンスとセキュリティを強化できることが挙げられます。
システムがインターネットに接続されることにより、情報漏洩のリスクが高まります。
こうした事態への対策として、ERPソリューションの導入によってデータを一元管理し、内部統制を徹底することでセキュリティ対策を強化することが可能です。
⑤新たなイノベーションのヒントになる
ERPソリューションを導入することで、部署をまたがり多様性のあるデータを相互に紐づけることが可能です。
蓄積されたデータを分析・解析することで得られる視点は、新たなイノベーションを生み出すためのヒントになります。
データは蓄積するだけでなく、構造化し分析・解析することで、新たなビジネス創出のヒントを得ることが可能です。
2025年問題/2027年問題とは
SAP ERPは統合基幹システムとして、長年市場を牽引してきました。
しかし、システムの肥大化によってリアルタイム性の実現は困難になりつつあります。
そのため、インメモリーデータベースによって、リアルタイム性が向上したSAP S/4HANAへの移行が推奨されています。
その中で、これまでのERPソリューションのサポートを2025年で終了するとSAP社から発表されました。
これが2025年問題と呼ばれています。
しかし、ユーザーの移行期間等の問題を考慮し、SAP社はサポート終了を2027年に延長すると発表しています。
2025年問題/2027年問題の対応策
上述の通り、SAP ERPの保守サポートは2027年に終了します。
サポート終了までにSAPユーザーである企業がとるべき対策は以下の3つです。
対応策①:SAP S/4HANAへ入れ替え
対応策として一般的なものが、SAP S/4HANAへの移行です。
注意点として、SAP S/4HANAを導入する場合、SAP S/4HANA専用のデータベースとなるSAP HANAを利用する必要があることが挙げられます。
この場合、他社データベースは利用ができません。
SAP ERPはUNIX・Windows・Linuxなど複数OSで稼働する、マルチプラットフォーム対応です。
しかし、SAP S/4HANAはSAP HANAのデータベースしか対応していません。
移行をする際はその点に注意しましょう。
対応策②:SAP ERPを使い続ける
従来のSAP ERPシステムを継続して利用することも選択肢のひとつです。
2027年以降に終了するのは、メインストリームサポートのため、セキュリティプログラムは更新されます。
SAP ERPの利用を継続すること自体は可能です。
しかし、システム障害があっても修正プログラムが提供されないといった問題があることを考慮しなければなりません。
そのため、第三者保守サービスと保守サービス契約を締結することが望ましいでしょう。
対応策③:他社ERP製品に乗り換える
SAP ERPからSAP S/4HANAへの移行では、アーキテクチャが刷新されているため、他社ERPソフトウェアへ移行することと同等の手間がかかります。
そのため、他社ERPへの乗り換えを検討することも選択肢に入るでしょう。
自社のニーズ、業務フロー、導入費用等を加味した上で、他社ERP製品も視野に入れて検討していくことが効率的です。
SAP S/4HANAへの移行はグランパスコンサルティングにお任せください
2027年の保守サポート終了まで、時間があると思われがちですが、SAPコンサルタントが不足すると言われています。
そのため、円滑な企業活動のためにも、早めに方針を検討することが重要です。
弊社は、SAP導入プロジェクトに数多く参画してきた実績があり、業界最高水準のコンサルタントがサポート致します。
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