SAPフリーランスの年収はいくら!? 独立に必要なもの、案件獲得方法、年収アップ方法を解説
SAP社が提供するERP製品の導入検討・要件定義・構築に携わるSAPコンサルタントは、「2027年問題」で昨今人材不足に悩まされており、フリーランスでもスキルや経験次第では月単価400万円、年収5,000万円という高年収も実現可能な状況です。
本記事では、SAPフリーランスの報酬相場や案件獲得方法、年収アップ方法について解説します。
SAPコンサルタントの仕事内容
SAPコンサルタントの役割は、企業の経営・業務課題を分析し、SAPを用いて解決することです。
SAPコンサルタントの仕事内容を細分化すると以下の通りです。
役割 | 説明 |
---|---|
アプリケーションコンサルタント | 購買(MM)や販売(SD)などの各業務領域の専門家として、SAPのベストプラクティスに従った最適な業務設計を行う。 |
テクノロジーコンサルタント | インフラ領域のコンサルタント。 アプリケーションを運用するために必要となるサーバやDBの稼働管理・運用管理、アプリケーションの変更管理を担う。 |
ABAPエンジニア | ABAPというSAP固有の開発言語を駆使してアドオン機能を開発する。 |
PM・PMO | 責任者もしくは実務担当者としてプロジェクトの計画策定や進捗管理を行う。 |
SAPフリーランスとして独立に必要なもの
SAP経験者の方々から、自分はSAPフリーランスとしてやっていけるのか、ご相談頂く機会が増えています。
本章では、SAP経験者がSAPフリーランス(個人事業主)として独立するために必要な4つのものについて解説していきます。
①得意モジュール
SAPフリーランスとして独立するための1つ目の条件は得意モジュールです。
至極当たり前の話ですが、SAPフリーランスとして食べていくためには武器、つまり、得意モジュールが必要となります。
最近はフリーランスが流行しているため、武器も持たずにフリーランスとして独立される方がいますが、非常に危険です。
SAPフリーランスが案件に参画する場合は即戦力としての活躍が期待されます。
会社員時代とは違い、案件に参画しながら手取り足取り懇切丁寧に育ててもらうという機会はありませんので、参画と同時にパフォーマンスを発揮できる得意モジュールの習得が絶対条件となります。
SAPフリーランス活用の1つに外部からその領域のスペシャリストを調達できるというメリットがありますが、反対に、パフォーマンスを発揮しないSAPフリーランスは速攻でリリースされ、他の誰かに代替されるというデメリットでもあります。
ですので、会社員時代に得意モジュールを最低限1つ(可能であれば2つ以上)は習得しておく必要があります。
SAPフリーランスが未経験のモジュールで案件に参画すること自体珍しいですし、参画できたとしても即戦力としてのパフォーマンスが求められるため、得意モジュールを新しく増やしていくということが難しくなります。
SAPフリーランスになると、基本的には会社員時代に取得した武器を磨いていくということになります。
モジュールについては下記の記事でも解説していますので、参考にして下さい。
②経験
SAPフリーランスとして独立するための2つ目の条件は経験です。
下記の記事でも解説していますが、SAPフリーランスとして独立するためには最低でも5年は必要と考えています。
SAPフリーランスとして独立して活動すると、色々な案件に参画することになるため、独立前に複数案件で経験を積み、たくさんの引き出しを作っておく必要があります。
5年以上のキャリアはあっても、1つの案件しか参画経験が無いという方はこの引き出しが圧倒的に足りないため、 参画と同時にパフォーマンスを発揮できず、即リリースされるというケースが多々あります。
SAPフリーランスとして独立する前には最低3つの案件で様々なフェーズやポジションを経験し、どんな案件に参画しても即パフォーマンスが発揮できるように引き出しを増やしておきましょう。
③資格
SAPフリーランスとして独立するための3つ目の条件は資格です。
特に、SAPコンサルタントとして活動するためにはSAP認定コンサルタント資格の取得が必須となります。
SAP案件参画時には職務経歴書が必要となりますが、案件参画前の面接で必ず職務経歴書でSAP認定コンサルタント資格の取得有無は確認されますので、フリーランスとして独立する前に取得しておく必要があります。
SAPフリーランスとして独立した後に取得しようと考える方もいますが、SAP認定コンサルタント資格を取得するための学習環境や受験費用など、会社員と比べてフリーランスの方が金銭的な面で不利なため、会社員時代に必ず取得するようにしましょう。
④人脈
SAPフリーランスとして独立するための4つ目の条件は人脈です。
特に、人脈で重要となるのはプライムベンダーとの人脈になります。
フリーランスの方でたくさんのエージェントとの人脈が重要と考える方がいますが、商流が浅く案件に参画するためにはプライムベンダーとの人脈の方がより重要になってきます。
特に、あなたの実力やスキルを把握しているプライムベンダーの方であれば、案件に参画した時の活躍がある程度予想でき、フリーランス参画時のリスクである当たり外れを回避できますので、積極的に案件に参画しやすくなります。
また、プライムベンダー以外に重要となるのがSAPフリーランス同士の人脈です。
案件情報(プロジェクト○○はオススメ案件、プロジェクト△△は炎上案件)や節税対策など、同業者でしか知り得ない情報を得ることができるため、SAPフリーランスの人脈も必要となります。
SAPフリーランスの報酬・年収相場
SAPフリーランスの報酬相場は、最低1年以上のSAPコンサルタントとしての経験があれば、月単価70万円~200万円が見込まれます。
月単価は上流コンサルタントやプロジェクトマネージャーのポジションに近ければ近いほど高い傾向にあり、スキルや経験によっては月単価400万円で案件を獲得することも可能です。
アプリケーションコンサルタントに関しては、管理会計(CO)や生産管理(PP)といった専門性が高く人員が不足しがちなモジュールのスキル・経験があれば高単価でのオファーが狙えます。
一方で、開発エンジニアや運用保守担当といった下流工程になるほど月単価は低くなる傾向にありますが、JAVA等の一般的な言語を扱うエンジニアと比べると希少性が高いため、比較的高単価でオファーが得られる傾向にあります。
SAPフリーランスの案件獲得方法
SAP案件の報酬相場は、他の開発言語を扱う案件と異なり、高単価である傾向が強く、とても魅力的であると言えます。
本章では、SAPフリーランスが案件を獲得する方法を3つご紹介します。
①現職・前職ベンダからの案件獲得
最も手っ取り早く案件を獲得する方法として、まずはSAP導入案件を扱うコンサルティングファームやSIerへ入社して経験を積んだ後、勤めているベンダとの雇用形態を正社員から業務委託に切り替えることです。
現職ときちんと実績を上げて信頼関係が築けていれば実現可能ですし、慣れ親しんだ環境で仕事を進めることができるのでフリーランスの取っ掛かりとしては最適と思われます。
また、エージェントを挟んでいないことから仲介手数料も発生しないため、高単価での契約締結が期待できます。
このように、現職・前職ベンダと良好な関係を維持することはフリーランスとして働いていくうえで非常に役に立ちますので、退職の際は悪い印象を持たれないよう十分注意を払う必要があります。
②エージェント利用による案件獲得
フリーランス専門のエージェントに登録して案件を紹介してもらうことも有効な手段です。
冒頭でも述べた通り、昨今SAP人材は不足しているため、案件は多数あり、かつ1年程度の経験であってもオファーをもらえる可能性が非常に高いです。
また、エージェントに登録しておけばブランク期間が生じないように仕事を紹介してくれるため、自分で営業をかける労力や精神的不安を軽減できます。
その一方で、どのような案件にアサインされるかわからないことから、プロジェクトメンバとの相性が悪かったり、場合によっては炎上寸前の案件を紹介されて雰囲気の悪い職場で過酷な長時間労働が強いられたりといった事態も予想しておかねばなりません。
③クライアント企業からの指名による案件獲得
過去に担当したクライアントから高い評価を得られている場合、クライアントから指名されて案件を獲得できるケースがあります。
こういったケースではフリーランス側の交渉力が強い立場にあるため、高単価での案件獲得が狙えます。
この方法での案件獲得は、十分な経験を積むことと、これまでの案件で相当高いバリューを発揮しなければなかなか難しいですが、プロフェッショナルとしてこの水準を目指していくことはコンサルタント自身にとってのやりがいにもつながるのではないでしょうか?
SAPフリーランスの年収アップ方法
この章では、SAPフリーランスが年収をアップさせる方法を4つご紹介します。
①SAP認定コンサルタント資格の取得
SAP認定コンサルタント資格は、SAPの専門知識を有していることの証明に繋がります。
案件によってはSAP認定コンサルタント資格を有していなければ紹介されないものもあるため、高単価案件獲得や年収交渉のうえでは役立ちます。
現在は最新バージョンであるS/4HANAの認定資格を取得することをオススメします。
②上流コンサルタントへのキャリアアップ
より経営や業務に近い上流コンサルタントのポジションは高単価となる傾向にあります。
最も手っ取り早いのはコンサルティングファームへ入社して構想策定や要件定義の経験を積むことです。
コンサルティングファームであれば新入社員であっても半年~2年程度でいきなり上流工程を任されます。
SIerならば、二次請までで上流工程を担当できる会社を選べばチャンスはありますが、ABAPエンジニアから地道にキャリアを積んでいくことになるため、コンサルティングファームよりは時間がかかります。
上流工程の経験を積むのが難しい場合、ITストラテジスト、中小企業診断士、USCPAといった経営・業務の専門性を証明できる資格を取得することが考えられます。
これらの難関資格を有していれば、上流工程の経験が乏しくても評価されて上流案件を獲得できる可能性は十分にあります。
③プロジェクトマネージャーへのキャリアアップ
プロジェクトマネージャーのポジションも高単価となる傾向にあります。
こちらもコンサルティングファームや一次請けSIerでチームリーダー・PMO・PMの経験を積むことが、フリーランスでの高単価案件獲得に繋がります。
ベンダにいるうちになるべく若いころから少人数チームでも構わないので、リーダーとしての経験を積み、少しずつマネジメントできる規模を広げていくことが着実な方法です。
マネジメント経験が無い場合、PMPなどの資格を取得することが考えられますが、フリーランスの場合は経験がなければなかなかマネジメントのポジションを獲得するのは難しいため、できればベンダに在籍しているうちにリーダー経験を積んでおくことをオススメします。
④英語スキルの習得
英語のスキルは、SAPコンサルタントとして高単価案件を獲得するうえで、かなり重要となります。
SAPは日本法人のグローバル展開案件も多く、英語でのコミュニケーションが求められる場合、高単価になりがちです。
国内案件であっても開発工程をオフショアに委託する場合、英語のスキルがあれば現地の開発者と円滑にやり取りができますので、十分に報酬の交渉材料となります。
グローバル展開案件についても、ベンダに在籍しているうちに経験しておくことが望ましいですが、実務レベルで英語でのコミュニケーションが可能であれば未経験でも紹介してもらえる可能性は非常に高いですので、英語を勉強しておくことは有効と言えます。
まとめ
本記事では、SAPフリーランスの報酬相場や案件獲得、年収アップの方法について解説してきました。
フリーランスになる前にまずはベンダへ入社してプロジェクト経験を積むこと、ベンダに在籍しているうちに上流工程やマネジメントの経験を積んでおくことが、フリーランスとして高単価案件を獲得するうえでは一番の近道となります。
そしてそれ以上に、プロフェッショナルとして真摯に仕事に向き合い、取引先ベンダやクライアントとの信頼関係を構築していくことが最も重要と言えるでしょう。